まだまだ、小さな子供だった頃。
私はクリスマスになると、手作りの「肩たたき券」を10枚封筒に入れて、母にプレゼントしていました。
そのたびにクククと笑いながら受け取ってくれた母の姿を今でも覚えています。
大人になったら、もっと素敵なプレゼントをあげよう。いつもそう思っていました。
でも、大人になると、そんなことはすっかり忘れ、自分のことで一生懸命な毎日が続いていました。
クリスマス近くになると、電話で「何が欲しい?」と聞いて、
母から「なんでもいいよ」 という返事をもらうと、その時思いついたプレゼントを贈っていました。
離れて一人暮らす母への思いはそれで伝わっていると思い込んでいたのです。
「ああ、プレゼント届いたよ」と電話があっても「あ、そう」と短く返事をすると、
すぐに仕事に戻っていました。電話の前で寂しそうな表情をしている母は見えてなかったのです。
ある日、ふと立ち寄った本屋さんで一行の詩に出会い、「あっ」と声をあげました。
「あなたの声が聞きたい、あなたの時間がすこしだけ欲しい。」
年老いた母が欲しかったものは、モノではなくこれだったのです。
子供の頃の肩たたき券を 喜んでくれた母が本当に欲しかったクリスマスプレゼント。
私の時間を箱に詰めて赤いリボンをかけてプレゼントしよう。
そう思った時はもう母は星になっていました。
そこにいる愛する人を大切にね。
メリークリスマス。